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借地権の相続|地主の承諾は必要?手続き・税金・トラブル対策を解説

借地上の建物を相続したとき、最初に迷いやすいのが「地主の承諾は必要なのか」「何から手続きを始めるのか」という点です。
借地権は土地の所有権とは別の権利なので、相続では建物の名義変更だけでなく、借地契約や地主との関係も確認する必要があります。
相続そのものに地主の承諾は要りませんが、その後の売却や建て替えでは地主との調整が必要になる場面があります。
この記事では、借地権の種類、相続手続き、税金、地主とのトラブル、相続後の選択肢まで順に整理します。
手元に借地契約書がある場合は、契約期間や地代、更新条件を確認しながら読むと内容を整理しやすくなります。

目次

借地権とは?相続に入る前に押さえておきたい基礎知識

借地権とは?相続に入る前に押さえておきたい基礎知識 借地権とは?相続に入る前に押さえておきたい基礎知識

相続手続きに入る前に、まず借地権の種類と契約内容を確認します
旧法か新法か、普通借地権か定期借地権かによって、その後の扱いが変わります

借地権の定義と法律上の位置づけ

借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利のことです。
借地借家法(平成4年施行)および旧借地法によって規律されており、土地の所有者(地主)と借地権者との間で締結される契約に基づいて成立します。
借地権は、建物を所有する目的で土地を使う権利です。
そのため、一般的な土地の賃貸借とは異なる保護があります。

参考リンク:借地借家法|e-Gov法令検索

借地権の種類|旧法借地権と新法借地権の違い

借地権には大きく分けて、旧借地法に基づく「旧法借地権」と、借地借家法に基づく「新法借地権」の2種類があります。
1992年(平成4年)8月1日より前に設定された借地権は旧法が適用され、それ以降に設定されたものには新法が適用されます。

旧法借地権は借地人保護が強く、正当事由がなければ地主が更新を拒みにくい仕組みです。
都市部では現在も旧法借地権の物件が残っています。
一方、新法借地権には「普通借地権」と「定期借地権」があり、定期借地権は契約期間満了時に更新なく終了する仕組みです。
相続後の売却や建て替えを考えるなら、まず契約書で旧法・新法と契約期間を確認してください。

借地権と所有権の違い|相続における影響

所有権は土地そのものを自分のものとして支配する権利ですが、借地権はあくまで「借りている権利」です。
相続では、この違いが手続きの進め方に関係します。
所有権であれば登記名義を変更するだけで足りる場面でも、借地権の場合は地主との関係や賃貸借契約の承継という問題が絡んできます。

また、借地権は財産的価値を有しており、相続税の課税対象にもなります。
国税庁が公表する路線価図には借地権割合が記載されており、相続税評価額の算定において重要な要素となります。
借地権は建物だけを見ていると見落としやすいですが、都市部では相続税評価が大きくなることがあります。

借地権の種類や売却時の考え方など、より基本的な内容から知りたい方は、借地権とは?種類・売却・相続まで専門家がわかりやすく解説もあわせてご参照ください。

借地権は相続できるのか?地主の許可は必要?

借地権は相続できるのか?地主の許可は必要? 借地権は相続できるのか?地主の許可は必要?

借地権を相続したとき、まず確認したいのが地主承諾の要否です。
結論は、相続と第三者への譲渡を分けて考えることです。

借地権の相続に地主の承諾は不要

借地権の相続に地主の承諾は必要ありません
相続は法律上「包括承継」と呼ばれ、被相続人(亡くなった方)の権利義務がそのまま相続人に引き継がれる仕組みです。
民法第896条に規定されるとおり、相続人は被相続人の一身に専属するものを除き、すべての権利義務を承継します。
借地権もこの包括承継の対象に含まれるため、地主の承諾を得なくても当然に相続人へ移転します。

したがって、地主から「承諾料を支払わなければ相続を認めない」と言われたとしても、法的には支払う義務はありません。
ただし、地代の支払名義や連絡先を整理するため、相続したことは地主へ知らせておく方が実務上は安全です

参考リンク:民法|e-Gov法令検索

相続と譲渡・遺贈の違いに注意

相続と第三者への譲渡は、同じ名義変更でも扱いが違います
相続人以外の第三者に借地権を譲渡する場合や、遺言によって相続人以外の者に遺贈する場合には、地主の承諾が必要となります。
承諾が得られない場合は、借地借家法第19条に基づき、裁判所に対して「借地権の譲渡・転貸の許可」を申し立てることができます。

遺贈は内容によって扱いが変わるため、相続と同じ感覚で進めない方が安全です。
包括遺贈は相続と同様に扱われるため地主の承諾は不要ですが、特定遺贈については譲渡に準じるとする見解もあるため、注意が必要です。
相続人以外へ遺贈する予定がある場合は、遺言作成時に専門家へ確認してください

内縁の配偶者や事実上の同居人の場合

法定相続人ではない内縁の配偶者や事実上の同居人が借地上の建物に居住していた場合、借地権をそのまま承継することは原則としてできません。
ただし、借地借家法や判例においては、居住の保護が一定程度図られているケースもあります。
この場合は遺言や地主との個別協議が必要になるため、早い段階で弁護士などに確認します。

借地権の相続手続きの流れ

借地権の相続手続きの流れ 借地権の相続手続きの流れ

借地権の相続は、期限のある手続きを先に処理すると整理しやすくなります
流れは次の通りです。

ステップ1:相続人の確定と遺産の把握

最初に相続人を確定します。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、法定相続人を漏れなく特定します。
同時に、借地権を含む遺産の全体像を把握します。
借地権の存在を確認するためには、土地の賃貸借契約書や地代の支払い記録、建物の登記簿謄本などが重要な資料となります。

ステップ2:遺産分割協議の実施

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行い、借地権を誰が取得するかを決める必要があります。
借地権は共有すると後の売却や建て替えで全員の調整が必要になるため、単独取得と代償分割を検討することがあります。

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。
この書面には相続人全員の署名・実印による捺印が必要です。
借地権については、対象となる土地の所在地番・地積、建物の所在・家屋番号などを正確に記載しましょう。
相続人の人数が多く協議がまとまりにくい場合の進め方については、相続人が多い不動産は売却できる?進め方とトラブル対処法を解説も参考になります。

ステップ3:建物の相続登記(名義変更)

借地権そのものは登記されていないケースが多いですが、借地上の建物は登記されているのが通常です。
2024年4月1日から相続登記が義務化されており、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わなければなりません。
正当な理由なく期限内に申請しなかった場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。

建物の相続登記を行うことで、借地権の対抗要件(第三者に対して権利を主張できる要件)も備わることになります。
借地借家法第10条では、借地上の建物の登記が借地権の対抗要件として認められています。
売却や第三者への対抗を考えても、建物の相続登記は早めに済ませておく方が安全です
手続きは法務局で行い、必要書類は被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(または遺言書)、相続人の住民票、固定資産評価証明書などです。
書類が多い場合は、司法書士へ依頼する方法もあります。

参考リンク:相続登記の申請義務化について|法務省

ステップ4:地主への通知

地主の承諾は不要でも、相続したことは地主へ通知しておきます。
地代の支払い名義の変更や、今後の契約関係を円滑に進めるためにも、相続が発生した事実と、新たな借地権者となった相続人の氏名・連絡先を書面で伝えましょう。
通知方法は書面にして記録を残しておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。

ステップ5:相続税の申告と納付

借地権は相続財産として相続税の課税対象になります。
相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に対して相続税の申告を行い、納税する必要があります。
借地権の評価方法については、次のセクションで詳しく解説します。

借地権の相続税評価と税金のポイント

借地権の相続税評価と税金のポイント 借地権の相続税評価と税金のポイント

借地権には相続税評価があります。
借地権の評価額は土地の所在地や借地権割合によって大きく異なります。
評価額と特例の適用可否を確認しておきましょう。

借地権の相続税評価額の計算方法

借地権の相続税評価額は、以下の計算式で算出されます。

借地権の評価額 = 自用地としての評価額 × 借地権割合

自用地としての評価額は、路線価方式または倍率方式によって算定されます。
路線価方式は市街地の土地に適用され、路線価(1㎡あたりの価額)に地積を掛けて計算します。
一方、路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける倍率方式が用いられます。

借地権割合は国税庁の路線価図に記号(A〜G)で表示されており、30%から90%の範囲で設定されています(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。
都市部では借地権割合が高い地域も多くあります。
仮に自用地評価額が5,000万円で借地権割合が70%(C)であれば、借地権の評価額は3,500万円となります。
定期借地権は計算方法が異なるため、申告時は税理士へ確認した方が安全です。

参考リンク:路線価図・評価倍率表|国税庁

小規模宅地等の特例の活用

借地権の相続においても、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があります。
この特例は、被相続人が居住用に使用していた宅地等について、330㎡までの部分の評価額を80%減額できるというものです。

たとえば、借地権の評価額が3,500万円であった場合、特例が適用されれば評価額は700万円にまで圧縮されます。
要件を満たすかどうかで評価額が大きく変わるため、申告前に確認が必要です。

主な適用要件としては、被相続人と同居していた親族が取得する場合や、持ち家のない別居親族(いわゆる「家なき子特例」)が取得する場合など、いくつかのパターンが定められています。
家なき子特例については、①被相続人に配偶者や同居の法定相続人がいないこと、②相続人が相続開始前3年以内に自己または配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと、③相続した宅地を相続税の申告期限まで保有していることなどの要件をすべて満たす必要があります。
家なき子特例は要件が細かいため、該当しそうな場合は税理士へ確認してください。

参考リンク:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

地代・更新料にかかる税務上の注意点

借地権を相続した後は、引き続き地主に対して地代を支払う義務があります。
この地代は不動産所得の必要経費として計上できる場合があります。
また、相続後に借地契約の更新時期が到来し、更新料を支払った場合は、その金額が借地権の取得費に加算されるのか、必要経費として処理できるのかといった税務上の判断が必要になります。

さらに、相続した借地権を将来売却する場合には、譲渡所得税が課税されます。
この際、被相続人の取得費を引き継ぐことができますが、取得時期が古い場合は取得費が不明であることも多く、概算取得費(譲渡価額の5%)を用いると税負担が大きくなる可能性があります。
将来売却する可能性があるなら、取得費が分かる資料は相続時にまとめて保管しておきましょう

借地権の相続でよくあるトラブルと対処法

借地権の相続でよくあるトラブルと対処法 借地権の相続でよくあるトラブルと対処法

借地権の相続では、地主との認識違いや相続人同士の意見対立が起きることがあります。
よく問題になるのは、承諾料、更新、建て替え、相続人間の分け方です。

地主から承諾料や名義変更料を請求された場合

前述のとおり、相続による借地権の承継に地主の承諾は不要であり、承諾料や名義変更料を支払う法的義務もありません。
しかし、実際には地主から「名義が変わるのだから名義変更料を払ってほしい」と求められるケースが少なくありません。

名義変更料を求められたら、まず相続は譲渡ではないことを説明します。
話がまとまらなければ、支払いに応じる前に弁護士へ確認してください。
挨拶と承諾料は別の話です
関係維持のための挨拶をする場合でも、法的な支払義務が生じるわけではありません。

相続人間で借地権の取得を巡って争いになった場合

借地権は金銭的価値が高い財産であるため、遺産分割の場面で相続人間の争いの種になることがあります。
特に、借地上の建物に被相続人と同居していた相続人と、それ以外の相続人との間で、借地権の帰属を巡る対立が生じやすくなります。

遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
調停でも解決しない場合は審判に移行し、裁判所が分割方法を決定します。
生前に誰が借地権を引き継ぐか決めておけば、相続後の対立を減らしやすくなります。
生前の方針共有、借地権価格の把握、代償分割の検討、第三者を交えた協議を早めに進めると整理しやすくなります。

参考リンク:遺産分割調停|裁判所

地主から借地契約の解除や更新拒否を主張された場合

相続をきっかけに、地主から「この機会に土地を返してほしい」「契約を更新しない」と言われるケースもあります。
しかし、旧法借地権の場合は正当事由がなければ更新拒否はできず、新法の普通借地権においても同様に正当事由が求められます。

正当事由の有無は、地主・借地権者双方の土地使用の必要性、借地に関する従前の経過、土地の利用状況、立退料の提供の有無などを総合的に考慮して判断されます。
相続によって借地権者が変わったという事情だけでは、正当事由として認められることは通常ありません。
返還要求にその場で応じず、契約内容と法的根拠を確認してください
なお、地主が地代の受取りを拒否するなどの対抗措置をとってきた場合は、法務局への地代の供託手続きを行うことでリスクを回避できます。

建物が老朽化しており建替えが必要な場合

相続した借地上の建物が築年数を経て老朽化している場合、建替えの問題が生じます。
借地上の建物を建て替えるには、原則として地主の承諾が必要です。
承諾が得られない場合は、借地借家法第17条に基づき、裁判所に「借地条件の変更」や「増改築の許可」の申立てを行うことができます。

建替え承諾料の目安は、更地価格の3%〜5%程度とされていますが、地域や個別の事情によって異なります。
木造から鉄筋コンクリート造への変更など建物の構造を大幅に変える場合は、堅固建物になることで借地権の存続期間が長くなり地主の土地返還の見通しが遠のくため、承諾料が高くなったり承諾自体を渋られたりすることもあります。
特に旧借地法が適用される借地権では、建物の滅失・再築が契約更新や存続期間に影響を与えるため注意が必要です。
建て替えが必要なら、相続手続きと並行して地主との協議を始めます。
なお、借地上の建物が再建築不可物件に該当するケースも少なくありません。
該当する可能性がある場合は、再建築不可物件を相続したらどうする?損をしない対処法と売却戦略もあわせてご確認ください。

借地権を相続放棄したい場合

借地権を相続したくない場合は、相続放棄という選択肢があります。
ただし、相続放棄は借地権だけを放棄するということはできず、被相続人のすべての財産・債務を一括して放棄する必要があります。
相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要がありますので、期限管理には十分注意してください。

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとみなされます。
地代や管理費の負担が大きい場合でも、借地権だけを放棄することはできません
相続放棄は遺産全体で判断します。
なお、相続人全員が相続放棄をした場合、借地権は最終的に国庫に帰属する可能性がありますが、その前に相続財産管理人が選任されて処理されることになります。
相続放棄をしても、現に借地上の建物を占有している場合は、次の相続人や相続財産管理人に引き渡すまでの間、自己の財産と同一の注意をもって管理する義務がある点にも注意が必要です。

借地権を相続した後の選択肢

借地権を相続した後の選択肢 借地権を相続した後の選択肢

相続後は、住む・貸す・返還する・売るのどれを選ぶか決めます
それぞれ確認すべき点が違います。

そのまま住み続ける・貸し出す

そのまま住む場合は、地代の支払いと契約更新を引き継ぎます。
地代を支払い続ける限り、借地権は維持されます。
また、建物を第三者に賃貸して収益物件として活用することも可能です。
ただし、建物の賃貸と借地権の転貸は異なる概念であるため、建物を第三者に貸すこと自体は地主の承諾なしに行える場合がほとんどです。
売却も検討する場合は、相続した家はどう売る?売却の流れ・税金・注意点をわかりやすく解説も参考にしてください。

借地権を地主に返還する

借地権を使う予定がなく、維持管理の負担を避けたい場合は、地主に借地権を返還するという方法があります。
返還条件は契約内容によりますが、建物を解体して更地返還を求められることがあります。
解体費は建物の規模や構造で大きく変わります。

なお、地主との交渉次第では、建物を地主が買い取ってくれる場合もあります。
借地借家法第13条には、借地契約の期間満了時に更新が認められなかった場合に借地人が建物の買取を請求できる「建物買取請求権」が規定されていますが、期間途中の合意解約の場合は原則として認められません。
地主から買取価格や立退条件の提示があった場合は、その金額が妥当か第三者に確認してから合意してください。

借地権を第三者に売却する

借地権は財産的価値を有するため、第三者に売却することも可能です。
ただし、借地権の売却には地主の承諾が必要であり、承諾料(名義変更料)として借地権価格の10%程度を求められるのが一般的です。
地主の承諾が得られない場合は、裁判所に借地非訟事件として許可を申し立てることができます(借地借家法第19条)。
この場合、裁判所が承諾料の額を決定します。

なお、地主には優先的に借地権を買い取る「介入権」が認められており(借地借家法第19条第3項)、裁判所の許可手続きの中で地主自身が買い受けを申し出る場合があります。
地主にとっては完全な所有権を回復できるメリットがあるため、条件次第では積極的に応じてもらえるケースもあります。
第三者へ売り出す前に、地主に買い取り意向があるか確認する方法もあります。
売却期限がある場合は、借地権を扱う買取会社への直接売却も比較対象になります
借地権付き建物の売買を進める際の注意点は借地権付き建物の売買・売却・譲渡を進めるうえでの注意点で、買取先の選び方やメリット・デメリットは【借地権買取】買取先の候補やメリデメ・流れなどを解説で詳しく解説しています。

地主と協力して土地を第三者に売却する(底地と借地権の同時売却)

借地権者と地主がそれぞれ単独で権利を売却するよりも、両者が協力して底地と借地権をセットで売却したほうが、土地の買い手にとっては完全な所有権を取得できるため、高い価格での売却が期待できます。
これを「同時売却」や「協調売却」と呼びます。
地主と条件を合わせられるなら、同時売却は検討しやすい方法です。
同時売却のメリットや進め方については底地・借地権を同時売却するメリットやタイミングを徹底解説、地主が国(財務省・関東財務局など)である場合の実例は【底地と借地権を同時に売却するには?】国有地・財務省のケースで実例解説!で解説していますので、あわせてご覧ください。

借地権の相続を円滑に進めるためのポイント

借地権の相続を円滑に進めるためのポイント 借地権の相続を円滑に進めるためのポイント

相続前後でやっておくと後の手続きが楽になるポイントをまとめます。

生前に借地契約書の内容を確認しておく

相続が発生してから契約書を探したものの見つからない、あるいは内容が不明確だったというケースは珍しくありません。
生前に契約書の所在と、契約期間・地代・更新・建て替え条件を確認しておくと相続後の確認作業が減ります。
契約書が見当たらない場合は、地主側に控えが残っていないかを確認しましょう。

遺言書の作成を検討する

誰に借地権付き建物を相続させるか決めているなら、遺言で明確にしておく方法があります。
「借地権付きの建物を特定の相続人に相続させる」旨を明確に記載することで、遺産分割協議を経ずにスムーズな承継が可能になります。
ただし、他の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言であった場合、遺留分侵害額請求を受ける可能性がある点には注意が必要です。
借地権は高額な財産であることが多いため、遺言を作成する際は借地権の評価額を踏まえて他の相続人への配慮も含めた内容にすることが望ましいでしょう。
遺言の形式や遺留分まで含めて確認しておくと、相続後の争いを減らしやすくなります。

地主との関係を良好に保つ

借地権は相続後も地主との関係が続きます。
相続発生時の通知はもちろん、日頃からの地代の遅延なき支払い、建物の適切な維持管理など、誠実な対応の積み重ねが信頼関係の基盤となります。
地代の遅延を避け、連絡先を明確にしておくことが、将来の売却や建て替えの話し合いにもつながります。

専門家への相談を早期に行う

借地権の相続では、不動産・法律・税務の問題が同時に出ることがあります。
相談先は問題ごとに分けて考えます。
弁護士は、地主とのトラブル、遺産分割の紛争、相続放棄の手続き、借地非訟事件など法的な紛争全般に対応できます。
税理士は、借地権の相続税評価、相続税の申告・節税対策に精通しています。
司法書士は、建物の相続登記や遺産分割協議書の作成、相続放棄の申述手続きなどを依頼できます。
不動産鑑定士は、借地権の時価評価が必要な場合(遺産分割や売却の場面など)に適しています。
複数の問題が重なる場合は、弁護士・税理士・司法書士が連携できる体制かを確認すると手続きをまとめやすくなります。
相続放棄は3か月、相続税申告は10か月と期限が短いため、借地権評価や遺産分割は並行して進める必要があります。
迷っている段階でも、期限だけは先に確認しておく方が安全です。

相続発生から10か月間の対応チェックリスト

借地権の相続は期限が絡む手続きが多く、全体像を把握しないまま個別対応に追われると抜け漏れが生じがちです。
相続開始からの経過期間を軸に整理すると、優先順位を判断しやすくなります。

  • 〜3か月:契約書・登記簿など資料の確認、相続人の確定、相続放棄をするかどうかの判断(期限は相続開始を知った時から3か月)
  • 〜3年:遺産分割協議、建物の相続登記(2024年4月から義務化。取得を知った日から3年以内)
  • 〜10か月:借地権の評価額算定、小規模宅地等の特例の適用可否確認、相続税の申告・納付
  • 随時:地主への通知、地代の継続支払い、契約更新・建替え時期が近い場合の早期協議

相続放棄の判断期限(3か月)と相続税の申告期限(10か月)は特に短く、借地権の評価に時間がかかることを踏まえると、遺産分割協議は早い段階から並行して進めておくことが望ましいでしょう。

株式会社ネクスプラスの借地権相続への対応

株式会社ネクスプラスの強み|借地権の相続問題も安心して任せられる理由 株式会社ネクスプラスの強み|借地権の相続問題も安心して任せられる理由

借地権の相続では、相続登記だけでなく、地主との関係や契約内容の確認も必要になります。
売却まで考えるなら、借地権の査定と地主調整の両方を扱える会社かどうかを確認してください。
ネクスプラスでは、借地権付き物件について次のような相談に対応しています。

契約書不明・老朽化・地主調整が必要な物件も相談可能

実際の相談では、建物の老朽化、地主との関係悪化、契約書が見当たらないなど、複数の問題が重なっていることがあります。
ネクスプラスでは、こうした借地権付き物件についても、権利関係を確認したうえで買取可否を検討します。
査定では、借地契約、地代、建物状態、相続登記、地主との関係を確認して条件を整理します。

直接買取なら買主探しの期間を省ける

地代負担が続いている場合や相続税の納付期限がある場合は、売却時期も重要になります。
必要資料と物件状況が確認できれば、早い段階で買取条件を提示できる体制を整えています。
直接買取では、一般の買主を探す期間を省けます
売却期限が決まっている場合は、相談時に希望時期を伝えてください(買取と仲介の違いについては不動産買取とは?仲介との違いから信頼できる業者の選び方まで徹底解説で詳しく解説しています)。

相続登記や権利関係の整理も含めて相談可能

相続人間の意見が合わない、地主から条件変更を求められた、建物が長年放置されている、といった相談もあります。
こうした案件では、売却だけでなく権利関係の整理が先に必要になることがあります。
必要に応じて弁護士や司法書士と連携し、登記や権利関係を整理しながら売却方法を検討します

入居中の借地権付き建物も相談可能

借家人が入居している物件でも、入居中であることだけで売却できないわけではありません。
入居状況と賃貸借契約を確認したうえで、買取可否を判断します。
賃借人との契約関係を維持したオーナーチェンジ方式をはじめ、物件の状況やお客様のご希望に合わせた柔軟な買取プランをご提案いたします。
立退きを先に進める前に、現状のまま査定できるか確認してください

周囲への配慮が必要な場合も相談できる

借地権の相続に関するお悩みは、ご家族間のデリケートな事情や地主との関係性など、周囲に知られたくない内容を含むことが少なくありません。
周囲に知られたくない場合は、連絡方法や訪問時間などを事前に相談できます。
引渡し時期や契約条件も、物件状況を確認したうえで調整します。
広告を出さない直接買取であれば、一般の仲介より売却情報が広がりにくい点もあります。

他社で売却が進まなかった場合も、断られた理由を確認すると別の方法が見つかることがあります
借地権の相続は権利関係が複雑であるがゆえに、一般的な不動産会社では対応が難しいケースも多く存在します。
借地契約、相続、入居状況を整理し、売却方法を比較します。
売却方法が決まっていない段階でも、契約内容と物件状況の確認から相談できます。

借地権の相続に関するQ&A

最後に、借地権の相続で確認されることの多い点をQ&Aで整理します。
本文と重なる部分もありますが、結論だけ確認したい場合に使ってください。

Q1. 借地権の相続に地主の承諾は必要ですか?

A. いいえ、必要ありません。
借地権の相続(包括承継)は、売買や贈与などの特定承継とは異なり、地主の承諾なく当然に行われます。
これは借地借家法上も明確に認められている原則です。
したがって、承諾料や名義変更料を地主に支払う法的義務もありません。
ただし、相続が発生した旨を地主に通知し、新たな借地権者として挨拶をすることは、今後の円滑な関係のために非常に重要です。
地主が「相続は認めない」などと主張してきても法的な効力はありませんので、毅然とした対応を心がけましょう。

Q2. 遺言で相続人以外の第三者に借地権を遺贈する場合はどうなりますか?

A. 相続人以外の第三者への遺贈は「特定承継」に該当するため、地主の承諾が必要になります。
承諾が得られない場合は、裁判所に「借地権譲渡の許可」を申し立てることができます(借地借家法第19条)。
裁判所が許可を出す場合、通常は借地権価格の10%前後の承諾料の支払いが条件となることが多いです。
なお、相続人への遺贈(特定遺贈を含む)については承諾不要とする見解が多数ですが、念のため専門家に確認することをおすすめします。

Q3. 借地権の相続で名義変更の登記は必要ですか?放置するとどうなりますか?

A. 借地上の建物については、相続による所有権移転登記を行うことを強くおすすめします。
借地権自体が登記されていることは稀ですが、借地借家法では借地上の建物の登記が借地権の対抗要件とされています。
2024年4月1日から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記を行わないと、正当な理由がない場合10万円以下の過料が科される可能性があります。
放置すると、建物の売却や担保設定に支障が出るほか、相続人がさらに亡くなって数次相続が発生し、遺産分割協議がますます困難になるリスクもあります。
登記が未了のまま売却できるかどうかについては、相続登記していない不動産は売却できる?手続きの流れと注意点を解説で詳しく解説しています。

Q4. 相続人が複数いる場合、借地権はどのように分けるのですか?

A. 遺産分割協議によって、借地権を誰が取得するかを決めます。
借地権を物理的に分割することは困難なため、一般的には以下のいずれかの方法がとられます。
①特定の相続人が借地権を単独で取得し、他の相続人には代償金を支払う(代償分割)、②借地権を売却して得た代金を相続人間で分配する(換価分割)、③複数の相続人が共有で相続する(共有分割)。
ただし③の共有は、建物の増改築や売却など重要な処分行為に共有者全員の同意が必要になるほか、共有者が亡くなるたびに持分がさらに細分化される「数次相続」の問題も生じるため、できる限り避けることが望ましいとされています。

Q5. 借地権を相続したくない場合はどうすればよいですか?相続放棄をするとどうなりますか?

A. 借地権を相続したくない場合は、相続放棄という選択肢があります。
ただし、相続放棄は借地権だけを放棄するということはできず、被相続人の遺産すべて(預貯金や他の不動産、借金なども含む)を放棄することになります。
相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があり、期限管理には十分注意してください。
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとみなされます。
全員が相続放棄をした場合、借地権は最終的に国庫に帰属する可能性がありますが、その前に相続財産管理人が選任されて処理されます。
なお、相続放棄をしても、現に建物を占有している場合は次の管理者に引き渡すまで自己の財産と同一の注意をもって管理する義務がある点にも注意が必要です。

Q6. 借地権の相続税評価額はどのように計算するのですか?

A. 借地権の相続税評価額は、原則として「自用地としての評価額(更地の評価額)× 借地権割合」で計算されます。
自用地の評価は路線価方式または倍率方式で行い、借地権割合は国税庁が地域ごとに30%〜90%の範囲で定めています(路線価図に記号A〜Gで表示)。
都市部では借地権割合が高く設定される傾向があり、例えば東京23区内では60%〜70%が一般的です。
仮に自用地評価額が5,000万円で借地権割合が70%であれば、借地権の評価額は3,500万円となります。
なお、小規模宅地等の特例が適用できれば、評価額を最大80%減額できる場合があります。
また定期借地権は、残存期間や設定時の権利金の有無などにより通常の借地権とは異なる計算方法が用いられます。

Q7. 被相続人と同居していなくても小規模宅地等の特例(家なき子特例)は使えますか?

A. 一定の条件を満たせば、被相続人と同居していなくても小規模宅地等の特例を利用できる場合があります。
具体的には、①被相続人に配偶者や同居の法定相続人がいないこと、②相続人が相続開始前3年以内に自己または配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと、③相続した借地権上の宅地を相続税の申告期限まで保有していること、などの要件をすべて満たす必要があります。
ただし、この特例の適用要件は複雑で、2018年の税制改正により厳格化されているため、必ず税理士に確認することをおすすめします。

Q8. 借地権を相続した後、建物を建て替えることはできますか?

A. 借地権を相続した後も、建物の建て替え(再築)は可能です。
ただし、原則として地主の承諾が必要となります。
承諾を得る際には一般的に「建替承諾料」を地主に支払い、その相場は更地価格の3〜5%程度とされていますが、地域や個別事情によって異なります。
木造から鉄筋コンクリート造への変更など、建物の構造を大幅に変える場合は、堅固建物になることで借地権の存続期間が長くなり地主の土地返還の見通しが遠のくため、承諾料が高くなったり地主が承諾を渋ったりすることもあります。
特に旧借地法が適用される借地権では、建物の再築が契約更新や存続期間に影響を与えるため注意が必要です。
地主が正当な理由なく承諾を拒否する場合は、借地借家法第17条に基づき、裁判所に「借地条件の変更」や「増改築の許可」を申し立てることができます。
相続した建物が老朽化している場合、早めに地主との関係を良好に保ちつつ、建替えの意向を伝えて協議を進めることが円滑な手続きにつながります。

Q9. 借地権の相続で地主から「土地を返してほしい」と言われた場合はどうすればよいですか?

A. 借地権は相続によって当然に承継されるため、地主が相続を理由に土地の返還や契約の解約を求めることは法的に認められません。
相続人は、被相続人が有していた借地権をそのままの条件で引き継ぐことができます。
地主からの返還要求には応じる義務はありませんので、毅然とした態度で対応しましょう。
もし地主が執拗に返還を求めてくる場合や、地代の受取りを拒否するなどの対抗措置をとってきた場合は、法務局への地代の供託手続きを行うとともに、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
なお、任意の合意で借地権を返還する場合は、適正な立退料や借地権の買取り対価を受け取れるよう交渉しましょう。

Q10. 借地権を相続した際、地代の値上げを要求されることはありますか?

A. 相続を直接の理由とした地代の値上げには法的根拠がなく、応じる義務はありません。
地代の増額請求は、借地借家法第11条に基づき、土地の租税公課の増減、土地の価格の変動、近隣の地代相場との比較など、客観的な経済事情の変動があった場合にのみ認められるものです。
つまり、「相続人が変わったから」という理由だけでは値上げの正当な根拠にはなりません。

ただし、地主が相続のタイミングに合わせて値上げを打診してくるケースは実務上少なくありません。
これは、長年据え置かれていた地代が周辺相場と乖離している場合に、相続という契機を利用して交渉を持ちかけるパターンです。
もし値上げ要求があった場合は、まず現在の地代が周辺相場と比較して適正かどうかを確認しましょう。
固定資産税評価額や近隣の地代水準を調べ、著しく低廉であれば一定の増額に応じることも合理的な判断といえます。
一方、相場と大きく変わらない場合は根拠を示して交渉することが重要です。

増額請求について当事者間で合意に至らない場合、地主は調停・訴訟を経て増額を求めることになります。
その間、借地人は自らが相当と考える額の地代を供託して支払い続ければ債務不履行にはなりません(借地借家法第11条第2項)。
地代交渉で不安がある場合は、不動産鑑定士や弁護士に相談して適正な地代水準の見解を得ておくとよいでしょう。

Q11. 定期借地権は相続できますか?普通借地権との違いは?

A. 定期借地権も普通借地権と同様に相続の対象となり、相続人が承継することができます。
地主の承諾も不要です。
ただし、定期借地権には普通借地権とは大きく異なる特徴があるため、相続にあたっては十分な理解が必要です。

定期借地権の最大の特徴は、契約期間の満了により確定的に借地関係が終了するという点です。
普通借地権のような法定更新の制度がなく、期間が来れば原則として土地を更地にして返還しなければなりません。
したがって、定期借地権を相続した場合は、残存期間を正確に把握し、期間満了時の対応(建物の解体・撤去費用の準備など)を計画的に進める必要があります。

定期借地権には主に以下の3種類があります。

  • 一般定期借地権(借地借家法第22条):存続期間50年以上。
    期間満了で終了し、建物を取り壊して土地を返還。
  • 事業用定期借地権(借地借家法第23条):存続期間10年以上50年未満。
    事業用建物の所有を目的とするもの。
    居住用には利用不可。
  • 建物譲渡特約付借地権(借地借家法第24条):存続期間30年以上。
    期間満了時に地主が建物を買い取ることで借地関係が終了。

相続税評価においても、定期借地権と普通借地権では評価方法が異なります。
定期借地権は残存期間に応じて評価額が逓減していくため、残存期間が短いほど評価額は低くなります。
相続税の計算にあたっては、どの種類の定期借地権であるかを契約書で確認し、適切な評価方法を適用することが重要です。

Q12. 借地権の相続と「使用貸借」の違いは何ですか?

A. 地代を支払う賃貸借に基づく借地権は相続されますが、無償で土地を借りる「使用貸借」による利用権は相続されないのが原則です。
使用貸借とは、親族間で地代を取らずに土地を貸しているケースなどが該当します。
民法第597条第3項により、使用貸借は借主の死亡によって終了するのが原則です。
つまり、親が地主から無償で土地を借りて建物を建てていた場合、親の死亡により使用貸借が終了し、相続人は土地の利用権を主張できなくなる可能性があります。
親族間での土地利用で地代の授受がない場合や、固定資産税相当額程度しか支払っていない場合は使用貸借と判断される可能性が高いため、相続発生前に契約関係を確認・整理しておくことが大切です。

まとめ

借地権の相続は、通常の不動産相続と比較して複雑な要素が多く、正しい知識と適切な対応が求められます。
本記事の要点を整理すると、以下のとおりです。

  • 借地権は相続できる:地主の承諾は不要で、相続により当然に承継されます。
    名義変更料や承諾料を支払う必要もありません。
  • 地主への通知は必要:法律上の義務ではありませんが、良好な関係を維持するために、相続が発生したら速やかに地主に連絡しましょう。
  • 建物の相続登記は必須:2024年4月から義務化されています。
    借地権の対抗力を維持するためにも、早めに登記手続きを行いましょう。
  • 相続税評価を正確に行う:借地権割合を用いた評価方法を理解し、小規模宅地等の特例の適用可否も確認してください。
  • 共有は避けるのが原則:借地権の共有は将来のトラブルの原因になりやすいため、可能な限り単独相続+代償分割を選択しましょう。
  • 第三者への売却・遺贈には地主の承諾が必要:相続人間の承継には承諾不要ですが、第三者への譲渡や遺贈は別途承諾と承諾料が必要です。
  • 地主からの不当な要求には毅然と対応する:借地権は法律で強く保護されています。
    相続を理由とした明渡し要求や不当な金銭請求には応じる必要はありません。
  • 困ったら専門家に早めに相談する:借地権の相続は不動産・法律・税務が複雑に絡み合います。
    弁護士・税理士・司法書士・不動産鑑定士など、専門家への早期相談が問題の長期化を防ぎます。

借地権は適切に管理・活用すれば、相続人にとって大きな財産となります。
本記事を参考に、円滑な相続手続きを進めていただければ幸いです。
不明な点や不安がある場合は、一人で抱え込まず、早めに専門家へ相談することをおすすめします。